福島談合、地元の佐藤工業が“裏JV”受注

福島談合、地元の佐藤工業が“裏JV”受注
 福島県発注の木戸ダム建設工事で、地元建設会社「佐藤工業」(福島市)が落札できなかったにもかかわらず、元請け受注した準大手ゼネコン「前田建設工業」などの共同企業体(JV)と“裏JV”を組み、工事の一部を請け負っていたことが関係者の話で分かった。

 佐藤工業会長の佐藤勝三容疑者(67)は、県発注工事で地元業者を仕切る実力者で、その力を背景に大型工事で自社の利益を図っていた一端が浮かんだ。

 一方、県発注の下水道整備工事を巡る談合事件で、東京地検特捜部は28日、佐藤容疑者を競売入札妨害(談合)の罪で起訴した。

 木戸ダム工事は2000年8月に入札が行われ、予定価格は212億6250万円だった。佐藤工業は準大手ゼネコン「熊谷組」、中堅ゼネコン「奥村組」とのJVで参加したが、前田建設工業と中堅ゼネコン「日産建設」(現りんかい日産建設)、地元建設会社「田中建設」(福島県双葉町)のJVが206億3250万円で落札した。落札率(予定価格に対する落札価格の割合)は97%だった。

 関係者によると、特捜部の事情聴取を受けた入札参加業者の多くは、調べに対し、木戸ダム工事で談合したことを認めている。

 一方、佐藤工業は入札に参加した熊谷組などとのJVとは別に、表面に出ない形で前田建設工業が幹事社を務めるJVにも実質的に加わり、工事の一部を回してもらっていた。佐藤容疑者は逮捕前、周囲にこうした経緯を明かしていたという。また、前田建設工業などのJV関係者は、「佐藤工業がJV幹事の前田建設工業と話し合ってやったことで、『佐藤工業が裏から入ってきた』と聞いた」と話している。

 前田建設工業は木戸ダム工事を元請け受注した後の01年3月と7月、佐藤栄佐久・前福島県知事(28日付で辞職)が筆頭株主で、実弟の佐藤祐二容疑者(63)が社長を務める紳士服縫製販売会社「郡山三東スーツ」に対し、子会社とともに計4億円を融資しており、受注の見返りだった疑いが浮上している。前田建設工業は木戸ダム受注の経緯などについて、これまでの取材に「個別の商取引については回答を控えたい」としていた。