前福島知事らを逮捕 「わいろ」9億7000万収賄容疑

前福島知事らを逮捕 「わいろ」9億7000万収賄容疑

 福島県発注のダム工事を受注させる見返りに、前田建設工業などゼネコン2社からわいろを受け取ったとして、東京地検特捜部は23日、収賄容疑で前知事の佐藤栄佐久容疑者(67)を逮捕、実弟で衣料メーカー「郡山三東スーツ」会長、佐藤祐二被告(63)を再逮捕した。スーツ社が平成14年に水谷建設から受領した所有地の売却代金約9億7000万円をわいろと認定した。水谷建設脱税事件の「福島ルート」は談合事件を経て、自治体トップの汚職事件に発展した。

 調べでは、佐藤容疑者と祐二容疑者は共謀し、県発注の木戸ダム建設工事の一般競争入札前田建設が受注できるよう便宜を図った見返りに、14年8月と9月、水谷建設にスーツ社の工場跡地(郡山市)を時価を超える計約9億7000万円で購入させる形で、わいろを受領した疑い。

 前田建設を幹事とする共同企業体は12年8月に同工事を約206億円で受注。水谷建設は下請け受注していた。

 祐二容疑者は前田建設副会長だった相談役(74)と水谷建設元会長の水谷功被告(61)に「工場跡地を10億円で買って」とわいろを要求。相談役の指示で水谷被告が実行し、経営難を脱していた。贈賄側の相談役と水谷被告は調べに「工事受注の謝礼だった」と供述しているが、公訴時効(3年)が成立している。

 特捜部は、14年5月まで佐藤容疑者がスーツ社の取締役会長を務め、現在でも筆頭株主であることから、佐藤容疑者が経営に関与し取引実態の報告を受けていたと判断し、逮捕に踏み切った。

 佐藤容疑者はこれまでの取材に「経営にはノータッチだった」と関与を否定、祐二容疑者も調べに「兄は知らなかった」と供述している。

 特捜部は祐二容疑者の公職選挙法違反(買収)疑惑について「2年以上前の話であり、知事も辞職している」などとして立件を見送った。