福島知事選、裏金で買収の疑い 公選法違反も視野に

福島知事選、裏金で買収の疑い 公選法違反も視野に
2006年10月09日06時08分
 福島県が発注した下水道工事の談合事件で、東京地検特捜部は、競売入札妨害容疑で逮捕した、佐藤栄佐久・同県前知事の実弟で「郡山三東スーツ」社長の佐藤祐二容疑者(63)の調べを進めているが、焦点の前知事の関与についてはいまだ不透明だ。この中で、特捜部は知事選で多額の裏選挙資金が使われたことを突き止めたため、公職選挙法違反などの疑いがあるこうした資金の流れに着目した捜査展開を検討している模様だ。

 佐藤前知事は04年9月の知事選で、対立候補を大差で破り5選を果たした。この選挙で収支報告書に記載されていない数千万円の裏資金が動いていたことは、談合の仕切り役だった佐藤社長や設備会社社長の辻政雄被告(59)がゼネコンから受け取っていたとされる受注謝礼金の流れを特捜部が追う中で浮上した。

 この選挙で資金管理をしていた前知事の私設秘書や佐藤社長らが、数千万円の裏資金を選対支部幹部の県議らに配っていたことを、特捜部に対し相次いで認めた。県議らも、票の取りまとめの報酬だったことを説明しているといい、公選法違反の買収などにあたる可能性が高まった。

 この裏選挙資金ルートの立件も視野に入ってきたが、前知事の関与の有無の解明をめざす検察当局では、県工事をめぐりゼネコンと佐藤社長側が行った不明朗な土地取引などを疑惑の中心として引き続き調べている。

 問題の工事は、準大手ゼネコン「前田建設工業」などの共同企業体が00年8月の入札で、約206億円で落札した「木戸ダム」の建設工事。

 これまでの調べでは、前田建設工業が入札前の99年、この工事の下請け会社となる中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)に要請し、三東スーツの所有地を約3億5000万円で購入させた。前田建設工業と子会社は落札後の01年、三東スーツに計4億円を融資。さらに、水谷建設は02年に別の土地も約8億7000万円で買い、03年に代金を1億円増額していた。この融資と1億円増額は受注謝礼の趣旨だったことを、会社関係者が供述しているという。

 特捜部は、一連の取引について、02年まで三東スーツの役員だった佐藤前知事に認識があったかどうかなど、佐藤社長を追及している。