東証、暴力団排除を強化 警察庁と情報照合

東証暴力団排除を強化 警察庁と情報照合
2006年10月30日05時59分
 東京証券取引所警察庁と連携し、証券市場から暴力団やテロ組織など「反社会勢力」の排除に乗り出す。今年度中にも企業の役員や大株主らの情報と、警察庁が持つ反社会勢力の情報の照合を始める。暴力団などとの接触が見つかった企業は株式の新規上場拒否や上場廃止を検討する。暴力団との関係が疑われる企業の上場や、犯罪資金のマネーロンダリング資金洗浄)の可能性が指摘されており、東証は監視強化が必要と判断した。

 東証警察庁は来年初めにも、お互いの情報を照会する連絡組織を設置する。対象は東証1、2部と新興企業向けのマザーズに新規上場を申請した企業や、すでに上場している企業。企業が東証に提出した現在と過去の役員、大株主、取引先などの情報と、警察庁保有する指定暴力団などの情報を照合する。

 東証が上場拒否した企業が他市場で上場する恐れがあるため、大阪、名古屋など4取引所や新興企業向けのジャスダックにも連携を呼びかけ、国内の全市場で警察情報が照会できる仕組み作りを検討する。

 資金洗浄インサイダー取引などの違法取引を監視するため、証券会社などで作る日本証券業協会にも、今後連携を呼びかける。反社会勢力が開設している証券会社の口座と警察庁が持つ反社会勢力の情報を照合し、監視強化に役立てる。

 東証では、99年開設のマザーズで上場1号になったリキッドオーディオ・ジャパンの元社長が暴力団との関係を指摘されたうえ、逮捕監禁の疑いで逮捕された。今年5月には、2部上場の投資用ワンルームマンション大手、菱和ライフクリエイトの元社長が暴力団の不正登記事件に関与した疑いで逮捕された。他市場も含め、反社会勢力が上場企業に近づき、利益を狙う動きが増えている可能性が指摘されている。

 さまざまな名義で証券口座を作り、資金洗浄や違法取引に悪用する例もある。ある証券会社の幹部は「反社会勢力に関係した口座は、多い時には月に数百口座も新設された。そうした口座は閉鎖している」という。

 東京、大阪、名古屋の3証券市場で株式売買代金に占める個人投資家のシェアは、05年には01年の2倍の約4割まで膨らんだ。東証は、急増する個人投資家の信頼を得るには、反社会勢力の監視強化が必要と判断した。