前福島知事わいろ認識 側近供述「11年土地取引から」

前福島知事わいろ認識 側近供述「11年土地取引から」

 福島県発注のダム工事をめぐる汚職事件で、前知事、佐藤栄佐久容疑者(67)=収賄容疑で逮捕=の側近の元県幹部が東京地検特捜部の任意の事情聴取に対し、佐藤容疑者の親族企業と水谷建設との間で行われた土地取引について「1回目の取引(平成11年)がすべて。明らかに『禁じ手』で、前知事も分かってやっていた」と供述していることが24日、関係者の証言でわかった。佐藤容疑者が土地取引のわいろ性を認識していたことを示す供述が判明したのは初めて。

 特捜部では佐藤容疑者側が、前田建設工業水谷建設側からダム建設工事の受注(平成12年8月)をはさんで継続的にわいろを受け取っていたとみて、土地取引の経緯などについてさらに追及するとみられる。

 これまでの調べでは、佐藤容疑者側と水谷建設との土地取引は計2回行われている。1回目は平成11年11月、佐藤容疑者の実弟、祐二容疑者(63)=同容疑で再逮捕=が会長を務める衣料メーカー「郡山三東スーツ」の駐車場跡地(約4000平方メートル)が、約3億4000万円で売却された。祐二容疑者の要請による取引で、時価よりも高い取引だったという。

 2回目の取引は14年8月から9月にかけてで、スーツ社の工場跡地(約1万1000平方メートル)が時価を超える約9億7000万円で売却された。

 特捜部は2回目の取引について、12年8月に木戸ダム建設工事を落札した前田建設工業と下請けの水谷建設が、佐藤容疑者への謝礼の趣旨で土地を購入したと判断。売却代金全額をわいろと認定した。

 関係者によると、佐藤容疑者側近の元県幹部は特捜部の任意聴取に、「1回目の土地取引がすべてだった。その見返りが木戸ダム工事で便宜を図ることだった。明らかに禁じ手で、前知事も分かってやった」との趣旨の供述をした。さらに「その後の利益提供も木戸ダム工事をめぐる見返りだった」などと説明したという。

 1回目の取引についてはすでに収賄罪の公訴時効(5年)が成立しているが、特捜部ではその取引もすでにわいろ性を帯びたものだったとみて、引き続き両容疑者の共謀関係を中心に調べを進める方針。

 一方、特捜部は24日、収賄容疑で県庁知事室のほか、同県郡山市にある佐藤容疑者や私設秘書の自宅、個人献金の受け皿だった政治団体「社会政治工学研究所」の事務所、福島市の元政務担当秘書宅などを一斉に家宅捜索した。