「知事周辺者が仕切り役」 福島県発注談合疑惑

「知事周辺者が仕切り役」 福島県発注談合疑惑

≪任意聴取 ゼネコン各社供述≫
 中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)による脱税事件の捜査で、福島県発注の下水道工事での談合疑惑が浮上した。関係者によると、工事を受注した準大手ゼネコン「東急建設」(東京都渋谷区)など入札に参加したゼネコン各社の担当者の大半が、東京地検特捜部の任意の事情聴取に対して談合を認めた上で、佐藤栄佐久・同県知事(67)と親しい会社社長が「仕切り役だった」と供述しているという。特捜部は今後、「福島ルート」の捜査を本格化させる見通しだ。

 談合を認めた東急建設東北支店(仙台市)の支店長(58)が聴取後の15日、東京都中央区内のホテルから飛び降り自殺していたことも明らかになった。

 関係者によると、東急建設福島市の建設会社「佐藤工業」と共同企業体(JV)を組み、平成16年8月に福島県が発注した「流域下水道整備工事」を指名競争入札で落札した。落札額は税込みで8億1690万円、落札率(予定価格に占める落札額の割合)は94・6%と高かった。

 入札にはゼネコンを幹事とする15JVが参加。事前に談合し、東急建設を「チャンピオン」(落札予定会社)に決めていた疑いが持たれている。この談合を仕切っていたのが佐藤知事と親しい会社社長とされ、チャンピオンを事実上決めていたとみられる。

 特捜部もこうした事実を把握しており、今月に入ってから東急建設東北支店長から複数回にわたって任意聴取し、支店長は談合を認めた。その後、入札に参加したゼネコン各社の担当者からも一斉に聴取し、大半の担当者が談合を認め、この会社社長について「仕切り役だった」と供述したという。

 「福島ルート」をめぐっては、水谷建設が平成11年と14年に佐藤知事の実弟(63)が経営する縫製会社「郡山三東スーツ」(同県本宮町)の土地2カ所を計13億円余りで購入。その間、県発注の木戸ダム本体工事を前田建設工業などのJVが約200億円で落札し、水谷建設が下請け受注していた。前田建設側は、13年にこの土地を担保に計4億円をスーツ社に融資していたことも明らかになっている。

 東北支店長の自殺について、東京地検岩村修二次席検事は「亡くなられた方のご冥福(めいふく)を心よりお祈りしております」とコメントした。