教育訓練給付金、不正受給は3926件6億3千万円

教育訓練給付金、不正受給は3926件6億3千万円
 失業予防や再就職支援を目的に創設された「教育訓練給付金」の不正受給が、1999年度の給付開始以降、計3926件、総額約6億3000万円に上ることが、厚生労働省の調査でわかった。

 昨年度だけで約16万人が利用した同制度を巡っては、組織的な不正受給が相次いでおり、愛知県警が7月に摘発した事件では、同省の認定額をすでに大幅に上回る被害が見込まれている。受給者本人に不正の有無を確認する厚労省の調査には限界があるため、判明分は氷山の一角とみられ、制度のあり方そのものが問われることになりそうだ。

 厚労省によると、99年度〜2003年度に判明した不正受給額は、70万〜2000万円だったが、04年度には一気に約3億7000万円(2323件)に急増、昨年度は約2億2000万円(1266件)だった。

 これらの大半は、受講者に謝礼を支払う見返りに協力を求めた、組織的な不正受給とみられる。情報処理の通信講座を開設した大阪府内の業者の場合、「自己負担は不要」などと広告して受講者を集めては、ニセの講座修了証明書を発行、受講者に支払われた給付金を回収していた。不正受給額は、山形県大阪府内で計170件、5000万円近くになるという。

 一方、愛知県警が捜査する事件では、講座運営会社の「パソコン検定合格講座」などが悪用された。受講者には負担金として約6万円を支払わせてパソコンと教材を支給するが、実際には「講座そのものが架空」(同県警)だった。

 犯行の手口は、ニセの講座修了証と受講料の架空の領収書を用意、本人に受給申請させ、給付金約23万円の全額を同社に振り込ませていた。同社は00年〜04年にかけて受講者3700人を集めており、同県警では、不正受給額は8億2000万円に上るとみている。

 厚労省はこの事件に絡み、全国の労働局に調査を指示。受講者に出頭を要請したり、不正の有無を照会する「確認書」を郵送したりしたが、確認できた不正受給は約400件、約6700万円にすぎない。

 労働局の担当者は、「不正受給の疑いがあっても、本人が講座を受けたと主張して、修了証や領収書があれば、それ以上追及できない」と調査の限界を認めるが、厚労省雇用保険課は「給付額の引き下げや、申請時の甘いチェック体制を改めており、不正受給は減るはずだ」と話している。