「水谷建設」脱税事件、所得隠しは30億円

水谷建設」脱税事件、所得隠しは30億円
 中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)の脱税事件で、同社の2003年8月期決算の所得隠し額は約30億円、脱税した法人税額は約9億円に上ることが関係者の話で分かった。

 東京地検特捜部は、同社経理担当代表取締役・中村重幸容疑者(55)を28日にも、法人税法違反の罪で起訴するとみられる。

 一方、架空の貸し倒れ損失を計上して隠した所得は十数億円で、その中には、暴力団組長への約2億円の貸付金が含まれていることも新たに判明した。

 中村容疑者は、水谷建設が1998年に不動産開発会社から約1億円で購入した福島県内の土地を、約8億円で買ったように偽り、03年7月、取引先の建設会社「小尾建設」への売却を装って架空の売却損を計上し、約7億6000万円の所得を隠し、法人税約2億3000万円を免れた疑いで逮捕された。

 その後の調べで、実態のないペーパー会社や休眠会社など計6社への貸付金が回収不能になったとして貸し倒れ損失を計上し、所得を隠していたことが判明。6社への貸付額は1億〜7億円で、03年と04年分の架空の貸し倒れ損失額は約15億円に上り、うち03年分は10億円を超えるという。

 03年分では、約7億6000万円の売却損と、10億円超の架空の貸し倒れ損失額のほかにも、架空の損失を計上。03年8月期分だけで所得隠し額は30億円に上るとみられる。

 関係者によると、03年分の架空の貸し倒れ損失の中には、同社が1999年、関西地方に本拠を置く暴力団組長に対して貸し付けた約2億円が含まれているという。

 同社は逮捕容疑となった福島県内の土地の架空売買で捻出(ねんしゅつ)した裏金の一部を別の暴力団側に渡していたことが、既に判明している。

 特捜部は、同社元会長・水谷功容疑者(61)についても来週にも起訴する見通し。さらに、特捜部は、04年8月期分でも、既に判明している三重県桑名市内の土地の仮装売買による2億円の所得隠し以外に、数億円の所得を隠した疑いがあるとみている。