自衛隊350人、無断渡航…防衛庁が全隊員に調査

自衛隊350人、無断渡航防衛庁が全隊員に調査
 海上自衛隊対馬警備所(長崎県対馬市)の隊員らが中国・上海などに無断渡航を繰り返していた問題を受け、防衛庁が、事務官を含む約26万人の全自衛隊員にアンケート調査を行った結果、約350人の隊員が「無断渡航したことがある」と回答したことが分かった。

 同庁幹部は、「予想以上に多かった」と困惑。集計から3週間が過ぎたが、どこまで処分すべきか、渡航申請制度をどうすべきかなど、いまだ方針を決められないでいる。

 防衛庁は、海自隊員の無断渡航問題が読売新聞で報道されたのを機に、8月上旬から、「過去に無断渡航したことはあるか」「無断渡航した人を知っているか」などの記名式アンケートを行った。

 8月下旬に単純集計したところ、過去に無断渡航経験があると申告した隊員は、海自約190人、空自約80人、陸自約50人にのぼった。また、実数は十数人程度ながら、全職員数に占める割合では、防衛施設庁が最も高く、本庁内部部局も陸海空自を上回った。事前申請制度を知らなかった隊員もいた。ある防衛庁幹部は「多かったからといって処分しないと不平等になるし、それぞれの事情も聞く必要がある。どうしたらいいのか頭が痛い」と話す。

 同庁では、海外渡航の約1か月〜10日前に、渡航先や同行者、費用負担者などを明記した書類を提出し、本庁の場合は防衛長官、部隊勤務者の場合は連隊長級以上の承認を得ることになっている。無断渡航は「職務上の注意義務違反」などで処分対象となる。上対馬警備所では、3人が8〜2回の無断渡航で停職10〜7日の懲戒処分を受けた。

 しかし、単純に処分できるわけではない。処分には、証拠類をそろえる必要があるが、渡航申請関係の書類は、部署によって保存年限が1年や3年と、まちまち。また、保存年限以前の無断渡航を立証するために、入国管理当局に職員の渡航歴を大量に照会するのかといった問題も出てきた。さらに、全員が本当に正しくアンケートに答えたのかは不確実で、「正直者が損をすることにならないか」「若い女性職員らの気軽な海外旅行に悪質性があるのか」といった議論も出ている。