辻容疑者、数年で大手の仕切り役に 福島談合事件

辻容疑者、数年で大手の仕切り役に 福島談合事件
2006年09月14日08時36分
 福島県発注の流域下水道工事をめぐる談合事件で、競売入札妨害容疑で逮捕された設備会社社長、辻政雄容疑者(59)が近年、同県内の建設業者で作る談合組織から、仙台市を拠点とする大手ゼネコンの談合組織に活動範囲を広げ、業界の仕切り役として「昇格」していたことが、関係者の話でわかった。ゼネコン側は、県側の意向を知る人物として辻社長の調整を受け入れたという。東京地検特捜部は、辻社長が、仕切り役として力をつけた背景について解明を進めている。

 特捜部は、佐藤栄佐久福島県知事の実弟(63)も、不正な受注調整に関与していた疑いがあるとみており、13日に事情聴取を再開し、慎重に調べている。

 ゼネコンや地元建設会社の幹部らによると、辻社長はこれまで、同県発注の工事入札では、「佐藤工業」を中心とした地元建設業者のグループで受注調整していた。ゼネコンが元請けとなる大規模工事の調整には、「口出しできなかった」(地元建設関係者)という。

 しかし、数年前から、大手ゼネコン「鹿島」(東京都港区)を中心とする、各ゼネコンの東北・仙台支店の談合組織の調整に関与するようになり、ゼネコン側から工事受注への協力を求められるようになったという。

 ゼネコン関係者は「県当局の意向を知り、影響力があると、複数の社が辻社長を評価したためだ」と話す。

 談合した疑いがもたれている、福島県発注の阿武隈川流域の広域下水道整備工事では、04年8月に実施された、福島市周辺の工区の入札前に、辻社長が受注希望があったゼネコン数社に対し連絡。準大手ゼネコン「東急建設」(東京都渋谷区)に工事をとらせるよう働きかけたという。その結果、東急建設福島県内の建設大手「佐藤工業」(福島市)の共同企業体が7億7800万円で落札していた。

 この辻社長らの受注調整で、県政に影響力があるとゼネコン側からみられていた、知事の実弟も協力していた疑いがもたれている。

 関係者によると、辻社長は特捜部の調べに対し、容疑事実を否認しているという。また、競売入札妨害容疑で逮捕された、佐藤工業会長で、県商工会議所連合会前会長の佐藤勝三容疑者(66)も、容疑を全面否認しているという。