大成建設が1千万円受注工作?…旧日本軍化学兵器処理

大成建設が1千万円受注工作?…旧日本軍化学兵器処理
 旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の処理事業を巡り、大手ゼネコン「大成建設」(東京都新宿区)が事業の情報収集費用などとして、入管難民法違反の罪で有罪判決を受けたコンサルタント会社社長で中国人の章健・元被告(51)に約1000万円を支払っていたことが4日、警視庁公安部の調べでわかった。

 章元被告は、同社が事業を受注できるよう在日中国大使館の幹部に働きかける文書を作成していたほか、宴会などを通じて中国政府関係者を同社側に引き合わせていたという。総費用数千億円に上る巨額事業の舞台裏の一端が明るみに出たことで、今後の業者選定のあり方が問われそうだ。

 公安部の調べなどによると、章元被告が社長を務めるコンサルタント会社「中国事業顧問」(中央区)の銀行口座には、2003年10月〜04年6月、大成建設から5回に分けて計約1000万円が振り込まれていた。章元被告はこの入金と前後する03年秋〜04年春、5回、中国に渡航し、03年9月には大成建設の担当者も同行していた。05年6月に北京市内で開いた宴席には中国政府関係者も出席し、同社担当者と遺棄化学兵器処理事業などについて意見交換しており、同社が費用を負担していた。

 また04年6月には、章元被告が同社の担当部長(59)を誘い、在日中国大使館の参事官ら2人と長野県内でゴルフコンペを開催。約15万円の費用は同社名義のクレジットカードで支払われていた。

 公安部による関係先の捜索では、章元被告が在日中国大使館の幹部にあてて、同社が遺棄化学兵器の処理事業を遂行できる能力があることなどを説明したメモも押収された。メモについて、章元被告は公安部の調べに、同社が、この事業を受注できるよう大使館幹部に働きかける目的だったと供述したという。

 大成建設の説明によると、元社員らから、中国の法令などに詳しい人物として章元被告を紹介され、業務委託契約を結んだのは03年8月。中国事業顧問名義の口座に振り込んだ約1000万円は、遺棄化学兵器処理事業も含め、中国各地で予定されている各種プロジェクトについて、情報を収集するための渡航費や日当などだったという。

 大成建設広報部は「遺棄化学兵器の処理事業に関する情報は収集していたが、不正な受注工作はしていない。宴会やゴルフ代を負担したのは、通常の営業の範囲内だ」としている。

 章元被告は今年3月、中国人の不法就労をほう助していたとして公安部に逮捕され、有罪判決を受けた直後の6月末、東京入管から退去強制処分を受け、中国に出国している