水谷建設の所得隠し、重機帳簿でも 廃棄と偽り売却

水谷建設の所得隠し、重機帳簿でも 廃棄と偽り売却
2006年07月14日08時02分
 中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)の脱税事件で、同社が、使用可能な中古重機やトラックなどを廃棄したように偽る帳簿上の不正操作で、数億円の所得隠しをしていたことが、関係者の話でわかった。これらのトラックなどの一部を売却し、代金を裏金にしていた疑いがあり、所得隠しの新たな手口が判明した。東京地検特捜部は、総額約20億円の所得隠しや、裏金の支出先について、法人税法違反(脱税)容疑で逮捕した同社元会長・水谷功容疑者(61)らの調べを進めている。

 関係者によると、水谷建設は帳簿上保有する中古トラックやダンプカー、重機などを、実際は廃棄していないのに、老朽化などで廃棄処分にしたと偽り、架空の損金を計上。この手口で申告所得を意図的に圧縮していたとされる。

 廃棄処分と偽って、帳簿から消した形になった中古トラックは、ひそかに売却され、その代金を裏金にしていた疑いが持たれている。

 特捜部は、水谷建設の脱税容疑の関係先として、9日に北朝鮮支援の非政府組織(NGO)「レインボーブリッヂ」(東京都中央区)を捜索している。このNGOは「水谷建設から支援品として中古トラックのほか、重機、ダンプ、発電機、乗用車などの寄付を受けてきた。北朝鮮の災害復旧工事に使ってきた」と説明。支援品は数億円分で、水谷建設経理処理については一切聞かされていないという。

 このNGOには、同社から約2億円の貸付金もあったという。

 特捜部は、NGO事務局から押収した資料を分析し、北朝鮮支援に回されたトラックや重機をめぐる経理処理が水谷建設の所得隠しに利用されていなかったか、貸付金の実態はどうだったか、など関連性を調べるものと見られる。

 水谷建設の総額約20億円に上るとされる所得隠しでは、(1)福島県いわき市内の土地を高値で買い取ったように仮装し、売却時に多額の損失が出たように見せかける(2)取引先が買収した複数のダミー会社を受け皿に貸付金名目で資金を支出し、その後、回収不能になったことにして架空の貸し倒れ損失を計上する――手口がこれまでに明らかになっている。

 裏金は、いわき市の土地取引で約7億円が捻出(ねんしゅつ)され、うち約2億円は同社の子会社(北海道苫小牧市)にわたり、約5億円が使途不明になっている