欠陥8年放置して事故、トヨタ品質保証部長ら書類送検

欠陥8年放置して事故、トヨタ品質保証部長ら書類送検
 熊本県警は11日、トヨタ自動車(本社・愛知県豊田市)のRV(レジャー用多目的車)「ハイラックス」の欠陥を知りながら、約8年にわたってリコール(回収、無償交換)などの改善措置を取らず、5人がけがをする事故を発生させたとして、同社お客様品質部長(55)(同市)ら3人を業務上過失傷害容疑で熊本地検書類送検した。

 ほかに送検されたのは、同社リコール監査室長(58)(愛知県三好町)と別の自動車部品会社役員(62)(豊田市)。3人は1995年以降、リコールの決定権を持っていた担当部の責任者で、「重大事故が起きていなかったのでリコールを届けなかった」と供述しているという。

 国土交通省は近く、3人の同県警への供述内容などを確認した上で、トヨタ側に事情説明を求める方針。

 調べによると、3人は96年以降、ハンドルの動きを前輪に伝える装置「リレーロッド」(鉄製、長さ82センチ)に強度不足があるのを知りながら放置。2004年8月12日、熊本県菊池市内の県道で、熊本市の公務員男性(23)運転の「ハイラックスサーフワゴン」(93年11月製造)が、リレーロッドが折れてハンドル操作ができずに対向車線にはみ出し、車と衝突して5人が重軽傷を負う事故を引き起こした疑い。

 事故車種は88年12月にモデルチェンジし、前輪にかかる荷重が95キロ増えたが、従来のリレーロッドを使ったため、強度不足が生じたという。

 同社は92年以降、運転中にリレーロッドが折れるなどの苦情が29件寄せられたため調査を開始、96年に強度不足が判明した。

 県警によると、同社はこの欠陥情報を3段階のうち危険度が最も高いAランクとしたが、3人はリコールを届け出るかどうかの検討会議を開かず、県警は「強度不足を認識した時点で、事故の予見は可能だった」としている。同社は96年6月以降に製造した車には、強度を増した改良品のリレーロッドを使っていた。04年10月には、欠陥部品を使っていた「ハイラックスサーフワゴン」「ハイラックス4WD」「ハイラックスサーフ」(88〜96年製造)の3車種約33万台のリコールを国土交通省に届けた。 トヨタ自動車は「3人の対応に落ち度はなかったと考えておりますが、捜査に全面的に協力させていただきます」とコメントした。