厚労省外郭団体、原稿料装い金銭提供 厚労省職員らに

厚労省外郭団体、原稿料装い金銭提供 厚労省職員らに
2006年04月28日03時03分
 厚生労働省の外郭団体「中央労働災害防止協会」(東京都港区、会長・奥田碩日本経団連会長)が東京国税局の税務調査を受け、05年3月期までの7年間で約3億8000万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。協会の出版物をめぐり、原稿料に見せかけて同省職員らに金銭を提供したと認定されたという。このほか経理ミスなどもあり、申告漏れ総額は約10億6000万円にのぼる。追徴税額は重加算税などを含めて約2億6000万円で、協会はすでに納付し、理事長ら関係者を処分している。

 原稿料の支払先は同省(01年1月までは労働省)安全衛生部職員のほか、研究者や医師など。協会は「どの本の、誰に対する支払い分が金銭提供と認定されたのか分からない」としているが、増刷の重なる出版物は同省職員が執筆することが多いとされ、金銭提供の相当部分が職員向けだったとみられる。

 同協会によると、協会は労働安全衛生分野の法令集や企業が研修で使うテキストなどを出版。外部に執筆を依頼した際は、執筆者の役職や分量に応じて原稿料を支払っている。200字詰めの原稿用紙1枚あたり1000〜3000円という。

 しかし、内容が変わらない増刷時にも原稿料を支払っており、増刷分について、国税局から「執筆の実態がなく、原稿料にはあたらない」と指摘された。さらに、仮装隠蔽(いんぺい)行為があったとして、02年3月期までの4年間で計約3億5000万円が悪質な所得隠しと認定された。

 協会は「増刷分も内容はチェックしてもらっており、理由のない資金提供ではないと考えているが、最終的に国税局の指摘を受け入れた。執筆者側から申し出があり、02年4月以降は増刷分の支払いをやめた」という。

 協会の04年度の一般会計収入は約99億円。うち約50億円が国の補助金と委託費でまかなわれている。実務のトップにあたる理事長は元厚生労働事務次官の沢田陽太郎氏。このほか昨年10月現在で、役員には厚労省出身者20人が天下っている。

 同協会は「経理に詳しい者があまりおらず、国の補助を受ける立場で甘えがあった。指摘を真摯(しんし)に受け止め、経理規定も改めた。今後は透明性を高めた運営をしたい」としている。

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 〈厚労省の小野晃・安全衛生部長の話〉 職員は執筆や内容のチェックなど一定の作業をしており問題ないと思うが、税務上は役務提供に当たらないということであれば、国税局の判断に従うのが適切だと思う。

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 〈キーワード:中央労働災害防止協会〉 労働災害防止団体法に基づき64年に認可法人として設立された。事業主の自主的な労災防止活動を促進するため、研修会や調査研究、出版などの事業を行っている。各業界の事業主団体などが会員。行政改革の一環で00年に「特別民間法人」となった。