水谷建設役員ら逮捕、5億円が使途不明

水谷建設役員ら逮捕、5億円が使途不明
 中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)が土地の売却で損失が出たように装い、2003年8月期に法人税約2億3000万円を免れたとして、東京地検特捜部は8日、同社の経理を担当する代表取締役・中村重幸容疑者(55)(同県いなべ市)、土地の架空売却先の建設会社「小尾(おび)建設」社長・小尾文男容疑者(58)(さいたま市)を法人税法違反(脱税)の容疑で逮捕した。

 水谷建設の水谷功・元会長(61)も、海外から帰国し次第、取り調べ、立件する方針。この土地の仮装売買を巡って同社に還流された約7億円のうち、5億円前後の支出先が不明で、特捜部は解明を急ぐ。

 調べでは、中村、小尾両容疑者は、水谷建設が1998年9月に不動産開発会社から約1億円で購入した福島県内の土地を約8億円で買ったように偽り、03年7月、小尾建設への売却を装って架空の売却損を計上、約7億6000万円の所得を隠し、法人税を免れた疑い。

 水谷建設は土地購入にあたり、不動産開発会社に代金約8億円を支払い、約7億円を還流させたという。このうち5億円前後が現金で支出され、使途不明になっている。

 特捜部は8日の捜索で、水谷建設本社から段ボール箱約260個分の証拠物を押収。佐藤栄佐久福島県知事の実弟で、同社と土地取引があった紳士服縫製販売会社「郡山三東スーツ」(福島県本宮町)社長宅からも資料を入手しており、不正経理の全容解明を目指す。

 中村容疑者は水谷建設総務部長を経て、03年に代表取締役常務・管理本部長に就任、主に経理を担当していた。小尾容疑者は水谷建設傘下の「朝日建設」(北海道苫小牧市)の元社長で、現在は、仮装取引に使われた土地を売却した不動産開発会社社長も兼務している。